近年、生成AIの急速な進化によって、プログラミングを取り巻く環境は劇的に変化しました。
ChatGPTやGitHub Copilotのようなツールは、自然言語からコードを生成し、従来のエンジニアが数時間かけて書いていた処理をわずか数分で提示してくれます。
その結果、特に「簡単なコードを書く」ことを主な仕事としてきたジュニアエンジニアの存在意義が問われ始めています。令和7年(2025年)の今、この潮流はますます鮮明になり、ジュニアエンジニアは“絶滅危惧種”になりつつあると言っても過言ではありません。
生成AIが最も得意とするのは、「すでに存在する知識の組み合わせ」に基づくコード生成です。つまり、基礎的な処理やよくあるアルゴリズムの実装など、これまでジュニアエンジニアが担当してきた領域です。
そのため企業からすると、ジュニアを採用して教育するよりも、AIを導入してミドル以上のエンジニアに活用させた方がコスト効率が高いという判断になります。
しかし、AIは万能ではありません。むしろ「それっぽく正しいコード」を返すことに長けているがゆえに、微妙な仕様の違いやセキュリティ要件など、肝心な部分で誤ったコードを提示することがあります。
このとき問題となるのは、「それが正しいのか間違っているのか」を見抜ける知識が必要だということです。もしジュニアがAIの出力を鵜呑みにすれば、誤ったロジックや脆弱性を含んだコードが積み重なり、システム全体の品質を大きく損なう危険があります。
最終的に、バグや障害が表面化したときに修正できるのは、経験豊富なシニアエンジニアです。AIが初期コードを書く時代だからこそ、その品質を検証し、正しく修正できる「上流の知識」が不可欠になるのです。
すでにアメリカではその兆候が顕著に現れています。
あるエンジニアの証言によれば、2022年9月ごろまではエンジニアの採用が活発で、ビッグテックへの就職も比較的容易だったそうです。しかし現在では、AirbnbやUberといったミドルティアの企業ですら採用は厳格化され、特に経験3年未満のジュニアエンジニアが新たに職を得るのは非常に難しい状況に陥っています。
その背景はシンプルです。
つまり、労働市場の構造的な問題に加え、AIの台頭によって「ジュニア層の必要性」が相対的に低下しているのです。
日本のIT業界はアメリカの数年遅れで同様の流れを辿ることが多い傾向があります。したがって、アメリカでジュニアコーダーの職が消滅しつつある現象は、日本にも確実に波及すると考えるべきでしょう。
特にスタートアップや中小企業は、限られたリソースを有効活用するため、AIを積極的に導入する動きが加速しています。教育コストをかけてジュニアを育てるよりも、少人数のシニアやミドルにAIを武器として活躍してもらう方が現実的だからです。
AI時代において、ジュニアエンジニアは確かに厳しい立場に置かれています。しかしそれは同時に、シニアエンジニアの価値が飛躍的に高まることを意味します。
これらを備えた人材こそ、これからの時代に求められる存在です。
ジュニアが完全に不要になるわけではありません。ただし、従来の「単純なコーディング作業」に依存していると生き残れないのも事実です。これからは、AIを理解し活用できるようになること、そしてより早くミドル・シニアへの階段を登ることが求められるでしょう。
令和7年、AIはエンジニアの仕事を根本から変えました。
しかし、「技術の本質を理解し、最後の砦として品質を守る役割」は現在のところシニアエンジニアにしか担えません。
AIをうまく使いながら品質コントロールをするシニアエンジニアの重要性は今後ますます高まっていくでしょう。